受講生インタビュー、梨花女子大学校 通訳翻訳大学院に合格された古田梨奈さんにご登場いただきました。
受講生インタビュー、今回は「実践通訳講座」出身生で、韓国の梨花女子大学校通訳翻訳大学院通訳学科に合格された井上こころさんにお話を伺いました。古田さんは2026年の春に晴れて入学されます。いったんは通訳者になることをあきらめ、翻訳の仕事をされていたという古田さん。そこからまた通訳の学習を再開し、通大受験を志したのはどうしてなのでしょう。学院長・幡野がお話を伺いました。
■ 高校の研修旅行で日韓の歴史に触れる。韓国語学習にハマったのは、BIGBANGのG-DRAGONのラップから
(幡野)通訳翻訳大学院の合格、おめでとうございます。まずは韓国語を学び始めたきっかけを教えてください。
(古田さん)高校生のとき、在日コリアンの先生が担任だったことがありました。先生が日韓の歴史についていろいろ教えてくれて、韓国に興味を持ちました。高校には国際的な視野や自主的な学習能力を養う目的で実施される「研修旅行」というものがあったのですが、行き先をいろんな国から選ぶことができて、私は韓国を選び、その先生と一緒に行きました。行き先に西大門刑務所があったりなど、日本人として辛いけれど直視すべき歴史に向き合うことのできるプログラムで、他では学べないことが学べたと思います。
Q : それは貴重な体験でしたね。その後はどんなことを学ばれましたか?
A : 大学の専攻は総合政策学部です。韓国人の教授がいて、東アジア文化論などを学びました。卒論は、日韓の近現代史です。第二外国語で韓国語を選択したのですが、そのときは韓国語の学習に興味を持てませんでした。周囲から「せっかくだから韓国に留学したら?」と言われたことはありましたが、韓国語はハングルが読めるくらいで、日本語の文献で学んでいました。
Q : そうですか、時間のある学生のうちに…と思いますが、興味が持てないものは仕方がありませんね。
A : 卒業後、保険関連の会社に就職しました。あるとき、BIGBANGのG-DRAGONのラップを聞いて衝撃を受けました。韓国語のラップは日本語にない音もあり楽しげで美しく、リズムも心地よかったんです。その音にすっかりハマって、韓国語の魅力を再発見しました。ここでやっと語学に目覚めたんです。「ハングルってかわいい!」と思ったり、突然目線が変わりました。会社に通いながら独学で韓国語の学習をしました。仕事は窓口業務、営業、アフターサービスと多岐に渡りましたが、営業で外回りしながらシャドーイングをしたりしました。そのときは韓国語学習が癒しになっていました。

(G-DRAGONの誕生日に訪韓)
■ 社会人生活3年のすえ、思い切って韓国留学。スイングダンスサークル活動やカフェでのアルバイトも
Q:韓流の力を改めて感じさせられるエピソードです。独学で勉強され、通訳を学ぶレベルまでどのように学習されましたか?
A : K-POPの歌詞を写し書きして、意味を調べたりしました。『韓国語学習ジャーナル hana』はとても役立ちました。ドラマにもハマっていろいろ観ていましたが、「応答せよ」は本当におもしろかったです。BTSのバラエティー番組もほとんど観ていましたね。「もっと韓国語に囲まれていたい、本格的に勉強したい」と思い、韓国留学を決心しました。社会人になって3年が経っていましたが退職して留学しました。選んだのは延世大学校の語学堂です。理由は、伝統がありしっかり学べそうだという点、あと、にぎやかな都心の方が楽しそうだなと思いました。クラス分けテストのあと、4級からスタートすることができました。

(留学時代のスイングダンスサークル。左から2番目が古田さん)
Q:独学でいきなり4級から、すごいですね。どんな留学生活でしたか?
A : テストはそんなにできた実感はなかったのですが…。韓国語会話に関しては、それまでは独り言を言っていたくらいですし。留学後、まだ韓国語があまり話せませんでしたが、早く上達したくて知り合いに紹介してもらい、スイングダンスサークルに入りました。ほとんどが韓国人というサークルでしたが、気分転換にもなりましたし、語学堂は外国人ばかりなので韓国語の上達にも繋がりました。ただ、振り付けに関する専門用語を覚えるのは大変でしたし、打ち上げや飲み会などで韓国語が聴き取れず一緒に盛り上がれなかったりもしました。皆、優しかったけれど、言葉の壁はありましたね。留学の後半では、カフェでアルバイトもしました。留学後、半年経つと資格外活動許可がもらえたんです(2019年9月当時)。

(カフェでアルバイトも)
語学堂は4級から6級で9カ月、そのあと、その上の「応用クラス」を受講して、ちょうど1年で帰国しました。このとき、2020年でちょうどコロナ禍だったのですが、また韓国に行きたく、韓国語を使っていたい、韓国と行き来できるような仕事がしたいと思い、思いついたのが通訳でした。そこで、アイケーブリッジ外語学院に通い出しました。

(延世語学堂の卒業式)
■ 語学堂卒業後、通訳の学習を開始。口をほぐしてからレッスンに参加。クラスメイトから刺激を受ける
Q:その頃はコロナ禍でレッスンが対面授業からオンラインに切り替わったころでした。説明会の時のことなど、おぼえていらっしゃいますか?
A : 幡野先生がレベルチェックテストを担当されていましたが、学院長が面接してくれるってすごいなと思いました。その時は留学から帰ってきた直後だったのですが、「学習期間も短いのに、発音がいいですね」と褒められたのが嬉しかったです。
Q:実際のレッスンはどうでしたか?
A : レッスンは思った以上に緊張感がありました。でも、きちんと準備をしていくとその分評価してくれました。印象的だったのは、嵯峨山みな子先生が、「口をほぐしてから参加するように。韓国語を読んでから来ると全然違うから」とおっしゃったんです。それをきちんとして参加すると、「準備してきましたね」と言われました。それで、レッスンの前には毎回発音練習をして参加しました。それはいまでも習慣になっています。
朴ジャッキー先生のレッスンは、授業の冒頭で、日韓1:1/韓日1:1の単語を発表しますよね(補足:팔방미인→「多才な人」の意で「八方美人」の意味でないなど、日韓で使い方が違う言葉を全員が発表する)。細かい言葉のニュアンスまで見てくれるのがアイケーブリッジだなと思います。この単語はこれがしっくりくる、というのを徹底的につきつめられるので、学んだ語彙はきちん書き溜めておきました。また、朴ジャッキー先生からは、語彙力、単語量を増やせばもっと伸びる。いままで音楽を聴いていたところを韓国語のニュースとかラジオにしてみてと言われて、それからスマートフォンのKBSアプリでニュースを聴くようになりました。そのニュースの内容が通大受験に出たりもしました。
語学堂と比べて、クラスのメンバーからは「韓国語が好き、もっと成長したい」という気持ちがオンラインの画面越しにも伝わってきて、士気が高まりました。コロナ禍で実際に会うことはできませんでしたが、たくさん刺激をもらえました。
■ 通訳の難しさを実感。翻訳スクールに通い、翻訳の仕事に従事
Q: それは良かったです。一方で、古田さんは「実践クラス」へのテストに通過されず、いったんレッスンを離れていますね?
A : はい、「実践クラス」の進級試験は、音読が難しかったです。それまでシャドーイングばかりしていて、ハングルを見て自分の力で音にすることをしていなかったことに気付きました。韓国語の活字自体に慣れていないことが如実に出てしまいました。本も読まないし…。それが課題だということに気付きました。
レッスンで通訳訓練をしてみたり、実際に知り合いに頼まれて通訳をさせていただく機会もあったのですが、全く力不足で、通訳を仕事にすることの厳しさ、難しさを知りました。いまの自分の実力では無理だと思い、そこで、翻訳だったらどうだろうと、翻訳スクールに通いました。
一定のコースを終了して、トライアルテストを受け、いくつか受けた中で合格した翻訳会社に所属し、1年と少しフリーランスの翻訳者として働きました。その後、翻訳会社所属のチェッカーになり、数年働きました。韓国の通販サイトの翻訳も請け負ったことがあります。
■ 通訳に再挑戦。通大受験を志す
Q:それはすごいことですね。翻訳もこれまた厳しい世界ですが、お仕事に繋げられたのは素晴らしいです。
A : はい、でもこの経験が、また通訳に戻ることにも繋がりました。黙々と作業するより、やはり外に出て人と接したり話す仕事がしたいと思ったんです。やっぱり通訳に挑戦したい。アイケーブリッジでもう一度レッスンを受けてみようと、再度お世話になることになりました。
Q:そうだったんですね。久しぶりに古田さんからご連絡をいただいて、とても嬉しく思いました。では、そこから通訳翻訳大学院(以下、通大)受験を意識されたのでしょうか。
A : はい、 留学後からずっと気になっていた通訳大学院が、事あるごとに頭に浮かびました。私は韓国語学習を始めたのが早い方ではないと思っていたし、無理だと思う気持ちも同時にありましたが、挑戦しないまま諦めたら後悔しそうだと思い、受験することに決めました。アイケーブリッジのレッスンに加え、韓国の通大受験専門の学院にも半年くらい通いました。週2回くらいのレッスンです。
Q:短期間で一気に準備されましたね。梨花女子大を選ばれたのはなぜですか?
A : 韓国外国語大学の通大も受けたかったのですが、だいたい毎年同じ日が受験日になるので、どちらかを選ばないといけません。学風の面で梨花女子大が自分に合っていると思い、そちらを受験することにしました。
■ 試験は2日間。まさに「天国と地獄」
Q:試験当日のことをお聞かせいただけますか?
A : 試験は2日間行われますが、1日目は韓日です。朝、口をほぐしてから向かいました。面接官の先生は3名でした。最初はサイトトランスレーション(略してST。文章を見ながら口に出して訳すこと)です。文章の内容は、カカオトークのアップデート問題に関するものでした。ジャッキー先生から勧められて聞いたラジオニュースで聞き覚えがある内容で、専門学院で対策していたものより、簡単に思えました。
また、もう一つの試験科目であるメモリー(文章を記憶すること)は、教保文庫の香りマーケティング戦略についてでした。この話題についても新聞記事で読んだことがあり、この日は「できた」と思えました。
梨花女子大の面接の質問は緊張をほぐすためにするものだから対策しなくていいと聞いていたのですが、質問も重要なのではないかと感じました。質問の内容は、「いつから勉強しているのか」、「ずっと翻訳をしてきたのか」、「なぜ翻訳でなくて通訳なのか?」などでした。
STもメモリーも手ごたえを感じられたので、1日目は「これは受かるんじゃないか」と少し調子に乗ってしまう感じで終わりました。
でも、2日目の日韓は……。もう、天国と地獄みたいでした。ちょっと安心して迎えてしまったんですが、STの題材はパレスチナ問題でした。読んでも全然頭に入って来なかったんです。パレスチナは韓国語で팔레스타인(パㇽレスタイン)と発音しますが、パレスティナ、というように日本語が混ざったような発音で言っていました。途中で気づいて、とても焦りました。でも、何があってもなるべく平静を装い、ひっかかったように見せないようにしようと心掛けました。通訳者が止まったら聞く人が不安になるから、押し通さないといけないと教わっていました。
メモリーの題材はデジタル機器使用の増加についてです。これも「できた」という感覚は得られず、一文まるまる訳が抜けてしまったりと不安なまま終わりました。
■ 質問への回答も重要だと感じた。先生がキラキラしながら通訳の楽しさを語ってくれたことを思い出した
Q: やはり一筋縄ではいきませんね。この日も面接で質問を受けるのですよね?
A: はい、面接官の先生からまた質問がありました。「他の大学院も受けたか」、「他の大学院もあるのに、梨花大を志望した理由は」などです。そこで、「私はアイケーブリッジという日本の学院で通訳を学びましたが、そのとき、こちら(梨花女子大の通大)出身の先生から教えを受けました。その先生が、レッスンの際にフリー通訳者の仕事は本当に楽しい。大変だけれども、そのぶんやりがいがあると、本当にキラキラしながら話されていたんです。それがとても印象的で、私もそのように通訳の仕事をしてみたいと思いました」と話しました。嵯峨山みな子先生のことです。

(2日目の試験、終了後)
Q:そんなことがあったんですね。オンライン授業の画面越しにそのキラキラが伝わったというのは、本当に本心から話されていたんでしょうね。
A : あとは、AI時代に通訳を学ぶ意義はあるかという質問もありました。「韓国語が好きだから学びたい。まだ人間しかキャッチできない文化などがあるはずだ。そこを生かしていけると思う」と意見を述べました。今年は質問に対する回答も重要だったのではないかと、個人的には思っています。
■ 卒業後は日韓のより良い関係づくりに携わりたい。韓流通訳もしてみたい!
Q:テスト結果が良かったことももちろん、古田さんの学びたいという思いや向上心が伝わったのですね。では大学院や今後の目標についてお聞かせください。
A : 大学院ではひたすら勉強したいと思っています。先生方や同期の仲間と切磋琢磨しあうのも楽しみです。しっかり体力をつけて、大学院生活を乗り切りたいです。入試の際の成績優秀者は奨学金をもらえるのですが、ラッキーなことにいただけることになりました。
高校時代から日韓の歴史や文化を学んできたので、卒業後は日韓のより良い関係づくりに携わっていきたいです。最近は日韓関係も良い方向に進んでいると思いますが、お互いの文化や歴史を深く理解して、より信頼し合える関係づくりに貢献できるような仕事に就けたら嬉しいです。韓国映画も好きで、好きな俳優さんがたくさんいるので、韓流通訳もしてみたいです。
Q: 奨学金をもらえるだなんて、おめでとうございます。最後に、通訳の学習をしてみようと思う方、通大受験を志す方に、ひとことお願いします。
A : 大学院に合格し、通うだけでもハードルが高いのに、大学院の入試のために本腰を入れて勉強をしなければならないというのが、私がなかなか受験に踏み切れない理由の一つだったと思います。もし同じような気持ちの方がいらっしゃったら、通訳や通大を難関だと思いすぎずに、まずは学院の先生方や仲間と会ってみてほしいです。目の前のやるべきことを着実にやっていけば辿り着ける場所だと伝えたいです。
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ありがとうございます。インタビューは以上となります。紆余曲折があったからこそ分かったこと、見られた景色ですね。大学院の合格、本当におめでとうございます。充実した大学院生活を送ってください。これからの古田さんを心より応援しています!

(日韓のより良い関係づくりに貢献したい、という古田さん)
聞き手:アイケーブリッジ外語学院 代表 幡野(2026年 2月)

