受講生インタビュー、今回は森山茂登子さんにご登場いただきました。

受講生インタビュー、「実践通訳講座」実践クラス受講生の森山茂登子さんにご登場いただきます。森山さんは4年ほどまえに当校に入会され、「シゴトの韓国語」コースより学習をスタート。その後、「時事韓国語」クラス、「実践通訳講座」‘準備クラス’を経て、現在、‘実践クラス’で通訳訓練を行われています。
これまでどんなふうに学習されてきたのか、どんなお気持ちで続けていらっしゃったのか、そして今後の目標は……、お話をお伺いしたいと思います。

韓流スターのファンミーティングで、はじめて通訳者を見た

(幡野)韓国語に興味を持ったきっかけをお聞かせください。

(森山さん)韓国ドラマ『冬のソナタ』が放映される少し前から韓国ドラマをよく見ていたんです。『冬のソナタ』はもちろん、『天国の階段』も観ましたね。韓国ドラマっておもしろいな~と思いましたが、韓国語を勉強しようとまでは考えませんでした。そんな中、6,7年くらい前でしょうか、『フルハウス Take2』というドラマで、そこに出てくるパク・ギウンさんという俳優さんの大ファンになったんです。その方のファンミーティングが日本で行われて、一人で行きました。
そのファンミーティングではじめて「通訳者」を見たんです。お目当てのパク・ギウンさんよりも目が行くくらい、とにかく、かっこよくて素敵で、惹かれました。それで、単純に「私も通訳者になりたい!なるんだ。」と思ったんです。その次の日、韓国語教室に電話をして、同じ週にすぐ学習を開始しました。もちろん「カナダラ(日本語のあいうえお)」から始めました。

6,7年前に、いちから韓国語の学習を開始されたのですね。留学等もされず、現在、通訳クラスで学ばれている……相当勉強されましたね?

はい、授業は週に一度なので、家では睡眠を削って、とにかく韓国語の勉強ばかりしていました。どうしたら通訳者になれるのか分からなかったので、まずはとにかく話せるようになろうと必死でした。ハングル検定などの検定試験も受けました。
あるとき、このままでは通訳者になれないのではと思い、通訳が学べる学校を探しました。アイケーブリッジのホームページを見たら、講師に現役通訳者の方がたくさんいらして、講師陣のレベルがとても高いなと思いました。それで、ここだ、と思って決めました。

「もっと大人っぽい話し方を身に着けた方が良い」とアドバイスされ、「シゴトの韓国語」コースへ

「実践通訳講座」(以降、通訳クラス)に興味を持たれて来校されましたが、「シゴトの韓国語」コースから開始されましたね?

そうなんです。これまでのレッスンでは1対1の日常会話しかしてこなかったので、公(おおやけ)の場での話し方や、丁寧な話し方ができなかったんです。受講カウンセリングで、「もっと大人っぽい話し方を身に着けた方が良いのでは」とアドバイスされて、「シゴトの韓国語」からスタートしました。

(もっと大人っぽい話し方を、とアドバイスされ、ビジネス韓国語の丁寧な言い回しを必死で学習)

基礎班、応用班とある中の応用班からスタートされたと思いますが、「シゴトの韓国語」クラスはどうでしたか?

私は会社という組織で働いたことがないので、日常会話だけでない、仕事で使えるいろんな言い回しが学べて、本当に勉強になりました。でも、電話番号の聴き取りや韓国人の名前の聴き取りが意外と難しく、全然できなくて大変でした。

そういえば、森山さんはモデル業をされていますよね。

大学を出てそのままその仕事を続けています。途中、結婚や出産で休んだ時期もありましたが。

モデルの仕事をされながら、韓国語通訳者を目指し、勉強されてきたのですね。

はい、そうです。アイケーブリッジで初めてグループレッスンというものを経験しました。それまでは、韓国語を話せば「すごい!」と言われてきたので「こんなに韓国語が上手な人がたくさんいるんだ」と衝撃を受けて、圧倒されました。かなり落ち込んで、このままではダメなんだな、と思って必死に頑張りました。

「時事韓国語」クラスで、知識や語彙を蓄えられた

修了テストは私が採点、面談を担当しますが、森山さんはかなりの高得点だったと記憶しています。このあと、「時事韓国語」クラスに進まれたんですよね。

延世大学の「時事韓国語」という教材でしたが、とても難しく感じました。いろんな分野のテーマが扱われていますよね。原子力だの、クローンだの……、でも、あそこですごく語彙が増えた気がします。
私は世の中についてあまりにも知らなくて、韓国語を勉強しながら、同時に知識を蓄えていった気がします。あの段階を踏まなければ、通訳クラスに行くことは無理だったと思います。
いま、通訳クラスにいて、いろんな分野の単語を知っているな、と自覚できるときがあります。ストレートに通訳クラスから入った年下のクラスメイトから、「語彙力ありますね」なんて言われると、「時事韓国語クラスで蓄えたのよ」と言っています(笑)。
時事韓国語クラスで毎回単語テストを行っていたんですが、スパルタ式で、範囲が多くて覚えるのが大変でした。延世大学の時事韓国語、YTNの時事韓国語、さらにほかの教科書で学習を続けましたが、途中で通訳クラスにチャレンジしたいという気持ちになって、レベルチェックテストを受けました。

(時事韓国語クラスで使用した教材は4冊に及ぶ。ここで語彙が増えた)

慣れない通訳訓練に戸惑い、落ち込んだことも

そうなんですね。ちなみに、このころ韓国語能力試験(TOPIK)6級(最上級)は取得されていましたか?

時事韓国語クラスに通っていたとき、初めてTOPIKを受けました。1回目は緊張して、パニックになってしまって、1、2点足りなくて、6級に届かなかったんです。2回目の受検で合格しました。ハングル検定はアイケーブリッジに来る前に2級を取っていて、1級を目指したいと思っていますが、いまは通訳の練習に時間を割いている状況ですね。

では、通訳クラスに進まれたときのことについてお伺いしましょう。レベルチェックテストを受けられたのですよね。

はい、そうです。レベルチェックテストを受けたとき、担当の方から「応援する意味を込めて合格」と言われました(笑)。

「熱意」はとても大切なんです。通訳クラスのレベルチェックの際、ボーダーラインの方は割といらっしゃるので、その場合はそこを見ます。食らいついてくるか、粘り強さ、そのあたりですね。

最初は通訳訓練の仕方にとにかく戸惑いました。例えば、リテンション(短い文章を覚え、すぐ同じ文章を言う)で頭がパニックになりました。でも、周りの人はできているんです。
ニュース音声の韓国語の聴き取りもできないし、先生から日本語訳が不自然だと指摘されるし……。とにかく、日本語が難しいということを実感しました。韓国語を聞いて、頭では分かっていても、それをきれいな日本語に置き換えられないんです。自分でも驚くくらいでした。
先生から指摘されると落ち込んでしまって、緊張するから余計パフォーマンスも悪くなって……、通訳訓練は、いままでの学習とは違いました。時事韓国語クラスに戻ろうかな、なんて思ったりもしました。

先生に追い出されないうちは頑張ろうと思った

そうですか。やはり、指摘されたりすると傷いてしまうこともあるかもしれませんが、それを自身への否定と捉えないで欲しいですね。あくまでも韓国語や日本語、通訳パフォーマンスに対する指摘なので。

はい、指摘されることはありがたいことですよね。言ってもらわないと、発音も直せないし、表現のおかしさも分からないし……。腹をくくって、先生に追い出されるまで頑張ろうと思いました。今はもう、先生からの指摘には免疫力がついてきました(笑)。

授業に参加する際、具体的にどんなふうに準備をして授業に参加されていましたか?

準備クラスは2ターム(当時は1ターム15回。現在10回)経験しました。準備クラスではサイトトランスレーション(以降、サイトラ。文章を見ながら声を出して通訳をすること)をたくさん行いました。次回扱う文章がメーリングリストで流れてくるので、それを予習として自分でサイトラしておいたり、宿題の題材だけでなくて、普段から韓日、日韓両方のサイトラを自主的に取り組みました。

(テーマごとに付箋を付けた「準備クラス」在籍時のノート。いま見返すことも)

すごいですね。あとはどんな学びが印象的ですか?

宿題で、韓国語のパダスギ(聴き取って書くこと)が出ます。パダスギした韓国語を、日本語にサイトラする、という流れでしたね。その日本語訳がとにかく難しかったですね……。直訳になってしまうんですよ。でもだんだん慣れて、訳すときのコツが分かってくるようになりました。

ついに「実践クラス」で本格的なトレーニングが始まる!と思った

2ターム(当時、15回×2=30回)で「実践クラス」(※1)に進まれたのはとても速いほう、かなり順調なケースかと思います。合格されたときは(※2)どんなお気持ちでしたか?

(※1:「実践通訳講座」には、準備クラスと実践クラスがあり、実践クラスでは逐次通訳訓練をメインに行います)
(※2:準備クラスの修了テストに合格すると、実践クラスに進むことができます。準備クラスには、実践クラスへの進級を目指す方だけでなく、あえて準備クラスを継続される方もいらっしゃいます)

いまでもはっきり覚えています。通訳者になりたくてアイケーブリッジに来て、実践クラスを目指して頑張ってきたので「ついに、ここまで来た。トレーニングが始まるんだ!」と思いました。でも……、入ったら「準備クラスに戻りたい」と思ってしまいました。

準備クラスは授業で扱う文章を予習することができますが、実践クラスは当日与えられた文章を逐次通訳しますよね。それが大変ですか?

はい、でもそれがまさしく「通訳」ですよね。その場で話されたことを通訳する、準備ができない……。初めて見る文章の通訳をするのは、毎週テストを受けにきている感じですね。先生からは「元イギリス首相のサッチャー氏のような鉄の女になりなさい」と言われました。私も鉄の女になろうと思います!

ノートテイキング(メモを取ること)がとにかく難しい

ぜひ、そのマインドで頑張ってください。通訳に必要な要素の中に、自信を持つことや場慣れすることがあると思います。「私はあの訓練をこなしてきた、だからどんな場でも大丈夫」と受講生のみなさんに思ってもらいたいと願っています。

実践クラスに入り、1年経ちましたけれど、ノートテイキング(逐次通訳するために、聴き取ったものをメモしておくこと)がとにかく難しい……。でも、何年も実践クラスにいてスラスラ逐次通訳をされる受講生の方が、ノートテイキングのコツを掴むのに何年もかかったと言っていたので、頑張るしかないなと思っています。

(自宅で逐次通訳の自習時に使用しているメモ取りノート)

実践クラスで扱う題材はどんなものが多いですか?やはり旬の話題ですかね。今なら、コロナとか……?

はい、旬の時事的な話題はもちろんですが、最近K-POPの話題もありましたね。最近日本でデビューしたNijiU(ニジュー)について逐次通訳をしました。そう、先日、宿題でBTS(防弾少年団)の記者会見のパダスギが出たんです。実践クラスの逐次通訳の題材でBTSの話題が出るのではと推測し、YouTubeのあらゆるBTSの動画を観ながらノートテイキングと逐次通訳の練習をしていたら、BTSのファンになってしまいました(笑)。

そういう方、多いみたいですよね。それにしても、普段からそのように自主的にYouTubeの動画などで逐次通訳の練習をしているんですか?

はい、あらゆる動画で練習をしています。老若男女、さまざまな音声で練習をします。韓国人男性の、さらには年齢の高い人の韓国語がとても聴き取りにくいので、意識していろんな韓国語を聞くようにしています。

同時通訳講演会で通訳者を経験。質疑応答でとても緊張してしまった

通訳者はいろんな人の韓国語が聞けるようにならないといけませんからね。素晴らしいです。実践クラスに通われて1年くらいでいらっしゃいますが、先日、当校のzoom同時通訳講演会で通訳者を経験されましたよね。いかがでしたか?

前もって講演者の先生がどんなことを話されるか骨子を知らせて下さるので、単語などは念入りに調べ、準備しておきました。練習も行いましたし、心配することはない、というレベルまで達し、当日を迎えましたが……、甘かったです。
よく先生方から「当日、何が起こるか分からない」と聞いていましたが、当日、予期せぬ雑音が入ったりもし、焦りました。練習したときの原稿は見ずに同時通訳をするつもりでしたが、どんなに自信があっても原稿は手元に置いておかなければと思いました。
そして、さらに大変だったのが、質疑応答の逐次通訳です。どんな質問が来るか、先生がどんな回答をするか分からないので、ものすごく緊張しました。私の番で、キーワードが聞き取れず、大失敗をしてしまい、相当落ち込みました。一生忘れられないと思います。
その後授業で、先生から「疑問に思ったら、話者に質問しても良いんですよ」と言われました。そのようなアドバイスはこれまでも聞いていましたが、その場になるととっさにできないんですよね。当日何が起こるか分からないというのはこのことかと思いました。

先生からは「3秒で忘れなさい」とアドバイスされました

これも経験ですよね。通訳者に必要なのは「ずぶとさ」だとも聞いたことがあります。

はい、よく「3秒で忘れなさい」と先生がおっしゃいます。そのときも「あーっ」と思いましたけれど、その教えを思い出して、そのあと頑張りました。未熟でしたけれど、私なりにやったかな、と思います。今回は韓日通訳でしたが、日韓通訳にもチャレンジしたいです。

是非チャレンジしていただきたいですね。通訳訓練をしてみたいという方に向けて、お勧め学習法を聞かせてください。

YouTube等で、あらゆる分野の、あらゆる人の話を聞くことが大切だと思います。自分が不得意な分野……例えば私はITなどに弱いのですが、敢えてIT分野のテーマについて聴いて、ノートテイキングをすることもあります。たとえば、心理学者の話、芸能人の話、まんべんなくですね。気付いたらBTSの動画ばかり観ていたり(笑)、どうしても自分の好きな話題ばかりで偏ってしまうので。

(クラスメイトに薦められた経済紙。記事を読み、録音をして、それを聞きながら韓国語に逐次通訳をするという自習をしている)

クラスメイトの方に勉強法を聞いて、感心したことがあります。この前、授業で「生物多様性」について通訳練習をしました。そうしたら、クラスメイトの方が授業のあとに、他の生物多様性の韓国語の動画を探して、ノートテイキングをして、日本語へ通訳して、その自分の通訳音声を録音して、聞いて、不自然だった部分をチェックした、とおっしゃっていたんです。すごいな~、と思いました。録音すると、自分が気付かなかった話し方のくせや、弱点、気付かなかったことが分かります。

だいたい、訳出しをしたら練習した気になってしまいますし、自分の声を聞くのは辛いものですが、録音をしてそれをチェックすることまでしたら完璧ですね。

あとは、最初から先生からも指摘されていたのですが、私は日本語が下手なので、新聞とかネットニュースの記事とか、いろんな記事を読むようにしています。

ショップチャンネルやQVCで通訳者をしてみたい

本当に勤勉でいらっしゃいますね。これからの目標について聞かせてください。

仕事で、ショップチャンネルに出ていたことがあるのですが、以前は韓流スターが来て、商品のプロモーションをしたりしていたんです。そんなときは、通訳者も一緒になって、商品を売ります。先生もこのようなお仕事をされたことがあるらしいのですが、普段会議通訳が中心だと、こういうときにどうしても硬くなりがち、森山さんは慣れているから合うのでは、とアドバイスされたことがありました。いま、コロナの関係で韓流スターが来ることはないのですが、チャンスがあれば是非やってみたいです。いまからディレクターさん等、テレビ関係の方にも言っています。何年後かにそのようなことができたら嬉しいです。

チャンスは準備をした人に訪れますからね。是非、いつでもできるように準備をしておいてください。

現在はショップチャンネルとはまた違うQVC(24時間チャンネル)に出演していますが、そこでは主に化粧品のモデルをしています。以前は韓流スターが来ることもやはりありました。先生からも、韓国関連は美容や化粧品の通訳の仕事が割と多いと聞いています。化粧品は好きですし、こちらの方面でも通訳の仕事が来るといいなと思っています。

本日はお話を聞かせてくださり、ありがとうございました。これから通訳クラスを目指す方、実践クラスを目指す方にアドバイスをお願いします。

孤独で辛い道のりかもしれません。やめたくなることもあると思うけれど、そこを乗り越えてほしいです。いや……、私も乗り越えていないかもしれません。やめることは簡単ですし、いつでもやめられる……、でも、限界が来るまでやってみたいと思っています。私は通訳の仕事がしたいという目標があったので、そう簡単にはやめられません。是非、一緒に頑張りましょう、と言いたいですね。

インタビューを終えて


インタビューは以上となります。目標に向かって突き進む森山さんのお姿は、本当に清々しいです。
通訳訓練の道のりは辛いこともあるかと思います。しかし、いったんその道に足を踏み入れたら、暗くて出口が見えず不安でも、もがき続けて、いつかとてつもなく美しい景色を見てほしいと思っています。
あきらめず、コツコツと努力を続ける森山さんは、いつかきっとそんな景色が見られることでしょう。これからも頑張ってください。心より、応援しています!

2020年 10月 聞き手:アイケーブリッジ外語学院 学院長 幡野