受講生インタビュー、梨花女子大学校 通訳翻訳大学院に合格された渡辺さんにご登場いただきました。

受講生インタビュー、今回は「実践通訳講座」出身生で、韓国の梨花女子大学校通訳翻訳大学院通訳学科に合格された渡辺さんにお話を伺いました。渡辺さんは、2022年の春に晴れて入学されます。通大(つうだい)と称される同大学院は難関且つ誰もが憧れる専門機関。渡辺さんは韓国留学の経験がないそうですが、どのようにして合格を勝ち取ったのか。目指すことになったきっかけ、勉強法、受験の準備や当日のことなどを、学院長・幡野がお話を聞きました。

(合格証書を持つ渡辺さん)

SUPER JUNIOR(スーパージュニア)の大ファンに。約4年でTOPIK6級

(幡野)韓国語を始めたきっかけを教えてください。

(渡辺さん)大学生のとき、韓国ドラマが流行っていてよく観ていました。中でも夢中になったのが「私の名前はキム・サムスン」。ヒョンビンがかっこいいから韓国語を習おう、という単純な動機で、大学付属の社会人向け講座で学び始めました。しかし、熱意が続かず最初のハングルのところで挫折してしまいました。

しかし、社会人になってから母の影響で、SUPER JUNIOR(スーパージュニア)にはまったんです。私としては、ここが「始まり」ですね。いまでも人から韓国語を学び出したきっかけを尋ねられると、SUPER JUNIORが好きになって、と話します。

もう一度本格的に韓国語を勉強しようと思い、新大久保にある語学学校で学びました。グループレッスンで基礎から学び、楽しかったのですが、すこし間延びしてきたので学校を移り、そこでもさらに自分を追い込みたくなって、次はマンツーマンレッスンができる教室に移りました。ちょうどその頃に韓国語能力試験(TOPIK)6級に合格しました。勉強をし始めて4年目くらいだったと思います。

毎日、韓国のラジオを聴く。「韓国語を学習しても意味がない」の一言で火が付いた

かなり集中して勉強をされたんですね。どのように勉強されていましたか?

とにかく毎日、2,3プログラム、ラジオを聞いていました。SUPER JUNIORがDJを務めているラジオも聞いていました。もちろん最初は分からないことだらけでしたけれど、好きだったので夢中で耳を傾けました。韓国語のリズムの習得などはラジオの力が大きかったですね。バラエティ番組もよく観ました。

あと、会社のお昼休憩でみんながランチにでかけているとき、隙間時間にNHKラジオの韓国語講座を聴いたり、通っていたスクールの勉強をしたりしていました。

留学はされたことがないと伺っていましたが、なるほど、生の韓国語にはそのように触れていらっしゃったのですね。通訳を学ばれようと思われたきっかけを教えてください。

実は、韓国語に一生懸命取り組むようになったきっかけがありました。とある方から「韓国は人口も少ないし、韓国語を学習したって意味はない。」と言われたんです。ショック且つ衝撃的でした。それが悔しくて火が付いたのかもしれません。趣味レベルだと意味がないかもしれないけれど、それを超えるレベルまで行けば、意味があるのでは、と。それを模索していたのですが、たどり着いたのが通訳でした。

コンサートでお母さんに通訳をしてみた

なぜ通訳かというと、韓国語を学び始めた時から目標はSUPER JUNIORの韓国で開催されるコンサートで母に同時通訳することだったんです。実力はまだまだですけど、実際に母に通訳をしてみて、非常にやりがいを感じました。それで、多くの人のために通訳をしたいと思うようになりました。

(お母さんと、SUPER JUNIORのソウル公演へ!)

そこで、通訳が学べるアイケーブリッジに来て、説明会に参加し、レベルチェックテストを受けました。それまでは市販されている学習書とか、語学堂のテキストでしか勉強したことがなかったのですが、レベルチェックテストで初めてニュース記事の韓日、日韓翻訳をしました。その時に初めて一般の韓国人が読むニュース記事に触れたんですよね。このとき、これからはこれまでと違う、一歩先のことをやるんだな、と実感しました。

勉強しないと落ちるんだ

「実践通訳講座」は準備クラスからスタートされましたね? いかがでしたか?

いままでの韓国語教室はみんなで楽しく、という割とゆったりした雰囲気で、行くところすべて「私がいちばん一生懸命」という感じでした。しかし、このクラスに入ってもっともっと一生懸命な人がいることに驚き、すごいな、と思いました。現役通訳者の先生方の授業は取り組む内容も高度で厳しく、毎回覚悟して参加していました。

最初、授業の予習復習などの準備においては、他の人よりは緻密じゃなかったかもしれません。授業の中で勉強することが多かったですね。1ターム目(※1)は授業以外では自習をほとんどしていなく、修了テスト(※2)の重要性もわかっていませんでした。初めて修了テストを受けてみて、「勉強しないと落ちるんだ」と思い至り、2ターム、3ターム目はテスト前に集中して復習などの勉強をしました。

(※1:実践通訳講座は10回(週1回、3カ月)を1タームとした更新制度です)
(※2:準備クラス9回目の授業に修了テストを行い、合格者が実践クラスに進級します)

準備クラスは授業でST(サイトトランスレーション→文章を見ながら声に出して通訳すること。以後、ST)を主に行いますが、取り扱うテーマが決まっていて、中には金融などの苦手分野の題材もありました。でも、乗り越えなければいけないんだな、と思い取り組みました。

実践クラスに合格。先生からの激励に感動

準備クラス3タームで実践クラスに進級されたのですね。とても良いペースだと思います。

はい、実践クラスにはぜひ進級したいと思っていました。合格したとき、10回目の授業の最後で、オンラインだったんですけれど、嵯峨山みな子先生から「少し時間ありますか?」と聞かれ、「何か怒られるのかな」とドキッとしました(笑)そうしたら先生が、「渡辺さん、上達していましたね。どんな勉強をされたのですか?」と。これまで先生に褒められることはなかったので、感動しました。

3ターム目が開始した頃から、宿題でないパダスギを自主的に行っていたので、もしかしたらそれが結果に結びついたのかもしれません。先生からは、「これからは逐次通訳の勉強を頑張っていきましょう」と激励されました。

(‘パダスギ’ノート。聴き取ったものに赤字を入れていく)

本格的な逐次通訳訓練。これこそが「通訳」。楽しかった

いよいよ実践クラスで本格的な逐次通訳を経験されるわけですが、いかがでしたか?

逐次通訳は、楽しかったです。これこそまさに、想像していた「通訳」だと思いました。題材は、民間企業、大学の教授、政府関係の講演会やスピーチ音声などで通訳をすることが多かったです。実践クラスは2ターム通いました。

受講生のレベルがとにかく高かったですね。特に日本語においては、言葉の選び方に感心することが毎回ありました。私はそんなにきれいな日本語を使いこなせないといつも思っていました。

実践クラスは初見の文章を通訳します。それが大変、と思う人もいるとは思いますが、通訳ってそういうものだとも思うんです。もちろん難しいけれど、できたときの達成感は準備をしたものより、初見のものができたときのほうが大きいですね。

コロナブルーに陥り、通大にチャレンジしようと思った

逐次通訳が楽しい、という感想を持っていただいたのは嬉しいことです。さて、それから通大を目指そうと思ったのはなぜですか?

コロナの流行が収まらず、想像以上に長引いてしまって、韓国に行くという私の生きがいが中断されてしまったことが大きいです。しかし、周りの人をみると、転職、結婚、出産と、新しい人生を送っている。自分だけ時が止まっている感じがして、まさにコロナブルーに陥ってしまいました。

そこで、何か挑戦したいと思い至り、ずっと無理だと決めつけていた通訳翻訳大学院を目指そうと思いました。挑戦するなら早い方がいい、とりあえずやってみよう、と。

受験科目を集中特訓。言葉の選び方、話し方も重要

そのお話は直接伺いましたね。どのように勉強をされましたか?

通大受験対策をメインで行う学院に7か月通い、受験科目であるSTとメモリー(文章の記憶、再生)を徹底的に行いました。メモリーは多くの方が苦手意識を持つかもしれません。先生からは「全部は覚えなくていい」と何度も言われ、「聞いたことを要約して伝えればいい」という発想への転換ができました。慣れてくると一言一言に執着しなくなり、全体を覚えようとしなくなることで恐怖心がなくなってきました。実際の通訳も、一言一言に執着するのではなく、その人が何を話したのかを覚えますよね。

アイケーブリッジでは、いかに通訳者として自然に話しているかを意識していました。ハキハキ話す、などの話し方や言葉選びを先生に指摘される中で、そういった方面に意識を向けられるようになりました。

通大受験対策の学院では集中して徹底的に受験対策ができたので、その技術は伸びた感覚があり、言葉の選び方、話し方についてはアイケーブリッジで学んだことが生きました。

通大の試験は2日間に渡って行われた。その内容は

合格を勝ち取るにはどちらも必要な要素であったと言えますね。通大は韓国外国語大学校(韓国外大)と梨花女子大学校(梨大)が有名かと思いますが、梨大を志望した理由を教えていただけますか?

オンライン説明会に参加して、強いイメージの韓国外大よりも、梨大の校風が自分に合っていると思いました。実践クラスでお世話になったぺ・スンジュ先生、嵯峨山みな子先生が梨大ご出身、ということも大きかったです。

(通訳翻訳大学院が入っている建物)

梨大の試験がどのようなものなのかも気になります。

試験は2日間に渡って実施されました。1日目が韓日、2日目が日韓。それぞれSTとメモリーを行います。メモリー文章の量はA4の半分くらいでしょうか。

韓国語のメモリーは、「女性にも兵役制度を適用させるべきか」というテーマ、日本語のメモリーは、ソニーグループの創業者やBTSを例に例えつつ、現在の日韓関係について論じる内容でした。STの韓日は、「ナイキの転売問題」、日韓は「香港のリンゴ日報」についてでしたね。そのうちの2つは受験対策の学院で勉強したことがある内容でした。

(試験当日の案内版)

「パッチムが弱いですね」に動揺。‘合格’を確認した瞬間。

日韓はもちろんのこと、世界のイシューに関心を持ち、話題となっていることは常にキャッチし、普段からいろんな記事を読んでおく必要がありますね。実際の試験はうまくいきましたか? 合格の瞬間をどのように迎えましたか?

それが、あとで思い返すと「ああ言えば良かった」とか、惜しい点がいくつもありました。また、2日目には韓国語での面談がありました。そこで、面接官の先生から「あなたはパッチムが弱いですね。どう考えますか?」と発音の指摘をされました。

緊張と動揺で、「(留学したことがなく)日本で勉強してきたので足りない部分もあると思います」とだけ答えました。いま思えば、「足りないことは認めているが最大限の努力をしています」など、少し気の利いたことを言えれば良かったのですが……。

そのようなことから、100%不合格だと思っていました。合否はオンラインで確かめます。諦めていたので、「不合格通知を見るか…」と思ってパスワードを入れたら、「합격을 축하드립니다.(合格おめでとうございます)」と書いてあったんです! 惜しいミスがあったのに、パッチムが弱いと言われたのに! と信じられない気持ちでした。

それは嬉しかったでしょうね。すぐに当校にもご報告くださいました。先生方もとても喜んでいらっしゃいましたよ。合格を勝ち取った理由は何でしょうかね。

想像ですけれど、「パッチムが弱い」と言われたときに、びくびくせず、毅然と答えたのが良かったのかもしれません。もともと堂々としているタイプだとは言われます。受験のときは、上手かどうかだけでなく、性格的なところも見られるだろうと聞いたこともあります。

韓国語学習者の皆さんにひとこと。お勧め学習法

本当におめでとうございます。留学経験なしで通大合格を勝ち取った渡辺さんがどのように勉強をされてきたのか、聞かせてください。

初級のころからラジオをひたすら聴いていたということは申し上げたとおりですが、アイケーブリッジで学んでいたときから行っていたニュース等のパダスギはずっと続けていました。その音源はKBSニュースが多いですね。2分くらいのものを選んで、パダスギ(ディクテーション、聴き取ったものを書くこと)をして、2回シャドーイングを行います。それから日本語へSTをして、パダスギした韓国語を音読する。それをセットでしています。最近の世界事情、韓国事情もキャッチでき、一石二鳥です。

あとは、学院で学んだことの復習だけをひたすらやっていたといっても過言ではありません。授業で出たきた内容を週末に振り返って、自分でSTやメモリーをしました。分からなかった単語も整理しました。

(パダスギノートは、これほどの数になった)

メモリーに関しては、ニュース等の記事を自分で声に出して読んで、覚えたものを再生、というふうに練習していました。

学院で扱った資料は、「Notion(ノーション)」というアプリを活用して管理していました。資料を取り込んだり、単語を整理したりできます。ペーパーレスで、一元で管理できるのでお勧めですよ。

(学習アプリを最大限に活用)

ちなみに、梨大の通大の過去問は、数年分がネットに出ています。過去問を見ると、その年のイシューのようなものがやはり多いですね。

オンライン授業ですし、「Notion」のようなアプリを活用して資料を整理できたら効率が良さそうです。それでは、通大合格を目指す方にアドバイスをお願いします。

通大のみならず、語学はとにかく地道にコツコツ続けることに尽きますね。あと、韓国語が好きだという気持ちを持ち続けることが大切ではないかなと思います。

今後の目標は、K-POPのイベントで通訳をすること!

ありがとうございます。それでは最後に、いまの目標を教えてください。

目標は、通訳者になってK-POPなどのイベントで通訳をすることです!

インタビューは以上です。「‘留学しなくても、通大に合格することができるんだ’と思っていただければ」、とインタビューを引き受けてくださった渡辺さん。コロナブルーに陥りながらも、「何かにチャレンジしよう」と発想を転換されたところが、単純にすごいな、(人と)違うな、と思いました。いつか是非、SUPER JUNIORの通訳をされる渡辺さんの姿が見たいです。新たな目標に向かって、がんばってください! 心より応援しています。

聞き手:アイケーブリッジ外語学院 代表 幡野

(「早くコロナが収束し、この景色が見たい!」という渡辺さん。いずれ、このような場所で通訳をされる日が来るのかもしれません。)